日本・多国間臨床試験機構 JMTO
Outline Trial
過去の活動報告
トランスレーショナルリサーチ(TR)と臨床研究情報センターの役割

京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部
福島 雅典

TRは患者さんの治療成績を向上し、予後を改善する、あるいは予防を向上するなどの明確な目的をもった事業であり、従来の個々の研究者による研究ベースの発想の延長ではない(Nature Medicine Birmingham,2002)。このことから従来の個々の研究を寄せ集めてもTRとならないばかりか,かえって有害である。
 TRを実行するには、確かな臨床基盤が必須である。例えば、創薬については、客観的かつ安全に臨床試験を行うことのできる体制ができていなければならないし、臨床試験のデータを収集し、解析するシステムおよび専門家の存在が不可欠である。また、臨床試験には、周到にデザインされたプロトコル(臨床試験実施計画書)が必須であり、当然、プロトコルを作成する能力がなければならない。ほとんどの医師研究者にとって、現時点では、臨床試験のデザインをすること、プロトコルを実施可能なレベルで記述することはほとんど無理である。プロトコル作成、CRF作成には,高度な臨床試験に関する専門知識と、きわめて注意深い臨床的洞察力と実地臨床に精通していることが必要である。また、優れた実務生物統計家の積極的参加が、試験のデザイン、症例数設定およびシステム開発等最初の段階(すなわち、前臨床データのレビュー、当該臨床試験の企画、目的と背景を詳細に検討して合理的根拠づけを行う段階)から、データ,管理・解析・評価まで要所々に必須である。また当然、高度なIT技術を要するので、システムエンジニア、プログラマーが必要である。現在、これらを統合して行うシステムは事実上、京都大学探索医療センター、神戸臨床研究情報センターにしかないと言ってよい。このような組織、システムは他で簡単にできるものではない。
 ゲノム情報を創薬をはじめとする新しい医療技術・診断・治療・予防開発に結びつけるには、深い臨床的洞察力と質の高い臨床情報がRepositoryとして不可欠である。質の高い臨床情報とは、プロスペクティブ(前向き)に計画的にプロトコルに基づいて綿密な品質管理の下に収集されるものであって、レトロスペクティブにあるいは通常医療における患者情報をそのままよせ集めればよいというものではない。すなわち、今後我々がつくり上げねばならないのは、各種の疾患に関するプロスペクティブなTotal Registry(全患者登録)をつくり、厳密にフォローしながら、かつ、次々に臨床試験を立ち上げ、特に第?相比較臨床試験を実行しつつ、第?相〜?相を通してそれらの進捗に応じて、付随研究として、ゲノム解析が行える体制である。このような体制はわが国にはこれまでに全く存在しておらず、今ようやく京都大学探索医療センター、神戸臨床研究情報センターに構築されつつある。



川下からのトランスレーショナルリサーチ

九州大学大学院医学研究院 医療システム学
信友 浩一

新医療技術の開発のきっかけは誰がリードしているのか?
川上の実験グループ:リサーチファンドは作ったが・・
川下の臨床医グループ:同ファンドに基づく研究のリーダー?
「心房性利尿ホルモン」を例に、わが国の現状
実験研究>臨床研究>疫学研究



トランスレーショナルリサーチにおける統計学的視点

富山医科薬科大学 統計・情報科学教室
折笠 秀樹

統計学とは結果に変動(ばらつき)が起こる場面で、何とかして正しい事実をつかむための方法論である。特定の抗がん剤の効果は、患者ごとに結果が異なるのは事実である。そこで、統計学が必要になる場面が出てくるのであろう。臨床試験の統計的原則というICHガイドラインによると、統計学の適用によりバイアスを極力減らし、精度の高い結果を得ることを目指すと書かれている。誤った結論に至らないように配慮し、なるだけ少数例で正しい結果を得るために統計学が必要なのである。失敗しないために検出力を80%から90%に上げ、症例数を増やしたほうが安全だというコメントをする統計学専門家は多いだろう。私もその1人かもしれないが、これからの臨床試験では症例数をできるだけ減らし、いち早く困っている患者へより良い治療法を届けるのが使命ではないだろうか。そのために統計学が使われていくべきではないかと個人的には考えている。
今回の発表でも症例数を節約して結論を得るという視点から、5つのテーマを取り上げる。第一は、ネットワークメタアナリシス(間接的比較を伴うメタアナリシス)というテーマである。このような手法により、より有用な治療法を無駄な臨床試験の省略によって得ることが可能かと思われる。第二は無作為化中止計画法である。Cytostatic薬剤に適するとされる。2段階の計画になっており、SDと判定された患者だけが第2段階の無作為化へ入れる。その判定に関してある条件を満たしていれば(SD判定の感度>1−SD判定の特異度)、症例数を節減できるのである。但し、本計画法については科学面・倫理面で疑問がある。第三のテーマは稀な疾患における臨床試験計画法である。これはすでに多くの提案がなされているが、特にBayes流のアプローチというものが注目を浴びている。このアプローチは1群の臨床試験へも容易に適用できる。中止基準にもよるが、症例数節減につながることが明らかなのである。最後に、QOLやSpirituality調査における諸問題点を指摘したい。これらは、がん治療で重視されてきた緩和医療の中で注目を浴びている。欠損値に対して最悪値や前値を補完することが多いが、その症例と類似した症例をPropensityスコアにより擬似的に得ることで補完するのである。観察研究をあたかもRCTとして解析する場面での応用例はかなり出てきたが、がん臨床試験における欠損QOLデータの統計解析でも応用可能だと思われる。
本日のお話はどれも問題提起にとどまるかもしれないが、今後皆さんが提案される臨床試験ではそれらをぜひ具体化してもらいたい。



卵巣癌の治療戦略とこれからの臨床研究

東京慈恵会医科大学 産婦人科・附属病院 臨床腫瘍部
落合 和徳

 卵巣癌は、罹患数当たりの死亡率が婦人科悪性腫瘍中もっとも高く、最近世界的に増加傾向にあり、わが国も同様である。進行卵巣癌予後改善のために、化学療法にも種々の工夫がこらされているが、その基本的な考え方には、1)従来の標準的化学療法に他の薬剤を追加する、2)標準的化学療法の一部を他の薬剤におきかえる、3)腫瘍の生物学的性格を考慮した治療を行う、がある。
1)に関しては現在の標準化学療法であるパクリタキセル(T)とカルボプラチン(J)の併用療法にアンスラサイクリン、トポテカン、ジェムシタビンなどを加えた3剤併用療法の試みがなされているが毒性が増すだけで、生存に寄与するまでには至っていない。2)についてはTJの基剤であるパクリタキセルをドセタキセルに置き換えた試みがイギリスを中心に行われ、この両者間には現在までのところ生存率に差は認められないが、QOLとくに神経毒性の点でドセタキセル群によい結果が出ている。生存率が同等の場合にはQOLをエンドポイントとする臨床研究も今後考慮すべきである。3)に関しては本邦の婦人科癌化学療法研究機構(JGOG)で行っているJGOG3014がある。これは明細胞癌に対するTJ療法とCDDP+CPT11併用療法の比較試験である。明細胞癌は予後不良で、分子生物学的にも漿液性をはじめとする他の卵巣癌と異なることが示唆されている。これは病理組織型を限定して行われている世界でもユニークな研究である。
ところで従来の研究に問題点がないわけではない。今回JMTO OC 01-01として本邦の進行卵巣癌治療成績を調査・解析した結果(詳細については2004ASCOにて発表予定)によれば、通常進行卵巣癌の対象とされるIII期卵巣癌の5年生存率はIII期のサブステージによって著しく異なることが判明した。IIIa期は、I-II期とほぼ同等で、予後が比較的良好で、IIIb、IIIc期が有意に予後不良であった。したがってIIIa期症例を含めると結果に大きなバイアスを生ずる可能性があり、IIIb、IIIc, IV期のみを対象とすることにより、さらに優れた研究プロトコールが設定できると思われた。このようにJMTO ovarian cancer outcome studyは今後の臨床研究を考える上で重要なreferenceとなるであろう。



泌尿器科領域における臨床研究の今後

京都大学大学院医学研究科 泌尿器科学
西山 博之

泌尿器科領域では、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、精巣腫瘍など種々の悪性疾患が治療対象となる。我々はこれまでに、これらの悪性疾患を対象に種々の臨床研究を行ってきた。本会議では、これらの悪性疾患の中でも特に予後が不良である浸潤性膀胱癌を対象に現在の臨床上の問題点と今後の臨床研究の方向性について述べる予定である。
一般に、膀胱癌は次のような特徴を有する悪性疾患である。
? 9割近くの症例の組織型が移行上皮癌である
? 膀胱癌の3割は浸潤性膀胱癌であり、根治的膀胱全摘術を施行しても、5年生存率は50%前後と予後不良である。
? 根治的膀胱全摘術を行う場合には、尿路変向術が必要となり患者のQOLが損なわれる。QOLを重視し、局所浸潤性膀胱癌に対して膀胱温存療法も実験的治療として行われつつある。
? 浸潤性膀胱癌に対しては、化学療法や放射線療法が一定の奏功率を示し、標準的化学療法であるMVAC療法ではCR/PR率は60〜70%前後である。
? MVAC療法に対して不応性の場合でも、GemcitabineやPaclitaxelなどの新規抗がん剤が奏効する場合がある。
 これらの背景をもとに、浸潤性膀胱癌に対する標準的治療法について各病期により下記のような問題点が提起されつつある。これらの問題点は今後多施設共同臨床研究として解決していく必要があると考えられ、本会議において臨床研究としての可能性について言及したい。
? 局所浸潤性膀胱癌における標準的治療法について
 補助化学療法が有用な症例の同定方法の開発
 膀胱温存療法と手術療法との治療成績の比較
(多施設前向きアウトカム研究)
? MVAC療法不応性浸潤性膀胱癌に対する2nd-line化学療法について
 新規抗がん剤併用レジメンの第I/?相臨床試験にむけて




呼吸器外科における肺癌化学療法の可能性

京都大学大学院医学研究科 器官外科学 呼吸器外科
和田 洋巳

わが国における肺癌死亡者数は1955年以降増加し続け、男性では1993年死因の第1位となり、2000年の死亡者数は1955年のそれよりも男性では5.9倍、女性で4.4倍と増加し、男女合わせて5万人以上に達している。その一方、現在でも発見された十数%が治癒するにすぎない状況にあり、その克服には、早期発見による外科的切除と、効果的な補助療法の確立が必要である。
術前化学療法は、(1) 微小転移を減少させ遠隔再発を減少させる(2) 原発巣を縮小させ手術を容易にする(3) 局所制御率を上げる(4) 治療効果が切除標本で判定可能である、といった利点を有する一方、(1) 合併症の増加(2) 術前治療非奏功例では切除のチャンスを逃す、といった欠点を有する。Roth(JNCI 86; 673-680,1994)やRosell(NEJM 330; 153-158,1994)が報告した第III相試験の結果では術前化学療法による生存率の改善が認められたが、これら報告は小規模(片群約30例)であり、手術単独群の予後不良 (MST 1年以内)等の問題点が指摘された。最近のI-IIIA期を対象とした第III相試験(J Clin Oncol 20; 247-253, 2002)において、術前化学療法はI-II期症例では有効だが、IIIA期症例では無効との報告があった。 現在、JMTOでは少量分割投与により副作用軽減と用量増加の可能性を期待した“IIIA期N2非小細胞肺癌に対する術前導入療法としてのパクリタキセルとカルボプラチンの少量分割投与の有効性の検討”が進行中である。
一方、術後補助化学療法に関しては従来のプラチナ製剤を含むレジメでは、それらの大半で治療の有効性を認めていない。2003年のASCOにおいてIALT (International Adjuvant Lung Cancer Trial) より発表されたシスプラチンを含んだ非小細胞肺癌に対する術後補助療法は、化学療法を含まない対象群に比べて有意に良好な結果が報告されているが、対象症例や放射線治療の有無など背景因子の不均一性と治療の安全性の問題点が指摘されている。術後補助療法においてその標的は微小転移病巣であり、外科侵襲による宿主の免疫力低下の可能性を考慮すれば、プラチナ製剤を含むレジメをはじめとする非手術例に推奨される化学療法と術後補助療法が同一でよいのかと考え、我々は非小細胞肺癌術後補助化学療法としてのUFTの有用性について検討し、その臨床的意義を報告してきた(J Clin Oncol 14: 1048-1054, 1996, Eur J Cardio-thorac Surg 15: 438-443, 1999)。2003年のASCOにおけるJLCRG (The Japan Lung Cancer Research Group)の報告でもI期肺腺癌に対するUFTの有用性が報告され、2003例を対象にしたメタアナリシス対象研究においても、5年生存率、7年生存率において有意にUFT投与群は、対象群に比べ予後良好であった(P=0.011, P=0.001)。現在JMTOでは病理病期II期、IIIA期に対する“非小細胞肺癌完全切除例に対する経口テガフール・ウラシル配合製剤を用いた術後補助化学療法の有効性に関する無作為化第III相試験”が進行中である。
今後の展望として、進行例には代謝阻害剤を加えることによりテガフールの抗腫瘍効果を高めたS-1の肺癌に関する有用性や、Gefitinibの安全性とその有用性を検討する必要があると考える。さらには、術後補助療法の効果予測因子としてのバイオマーカーの検討や患者の個性に応じた薬剤の選択といった集学的な治療が必要と考える。



高度進行・再発食道癌に対する免疫細胞療法

久留米大学医学部 集学治療センター
山名 秀明

進行・再発食道癌の治療においては放射線治療、化学療法、外科的切除術を主体とした集学的治療により大きな効果がみられるようになってきた。しかし、一旦化学療法や放射線治療が無効になると、患者の予後はきわめて不良である。このような食道癌患者に対して残されている治療方法として、免疫療法がある。
われわれは以前より癌集学的治療としての癌免疫療法の役割について模索し,食道癌腫瘍浸潤リンパ球や末梢血単核球から自己癌細胞特異的CTL cloneが樹立されることを基礎的研究により証明し、これらの研究成果を基に自己活性化リンパ球を癌局所に投与する免疫細胞療法を開発した。
まず高度進行・再発食道癌患者11例を対象として、自己活性化免疫細胞療法の第I/?相試験を実施し、4例に腫瘍縮小効果(CR1例、PR3例)を認めた。そこで更に、第?相試験として現在までに食道癌患者14例に同治療を試みたが、その効果はPR1例、SD2例で満足できるものではない。しかし、これら症例のなかでSD(病変増悪傾向+)もしくはPDとなった患者に後治療として化学療法/放射線治療を併用することで腫瘍縮小効果が認めた症例を経験した。一方、免疫細胞療法を継続中に抗腫瘍免疫活性の減弱をしばしば経験するが、その原因を基礎的に検討した。その結果、CD4+CD25+ T cellの割合が治療経過につれて増加し、TGF-β産生量も増大して免疫活性低下の一因と考えられた。そこで、抗IL-2α鎖モノクローナル抗体を培養液中に添加するとCD4+CD25+ T cell増加が抑制され、NK活性低下とTGF-β産生の抑制効果が認められた。
自己腫瘍刺戟による活性化免疫細胞局所移入療法は、たとえ化学/放射線治療が無効となってもある程度の抗腫瘍効果は期待される。また、免疫化学療法を併用することでその効果は更に増大する可能性が示唆され、CD4+CD25+ T cell増加抑制を目的とした抗IL-2α鎖モノクローナル抗体の併用によって更に有効性が高まるものと推測される。今後は、これら薬剤との併用療法に関する臨床試験を実施し、その安全性と抗腫瘍効果について検証しなければならないと考えている。



切除不能大腸癌に対するUFT/経口LV+CPT-11併用療法―第 I/?相臨床試験

東京医科歯科大学大学院 消化機能再建学
杉原 健一、植竹 宏之

切除不能進行・再発大腸癌に対する化学療法はいまだ満足すべき効果的治療法は確立していない。現時点では切除不能進行・再発大腸癌の治療に関しては以下の点が示されている。
?5FU/LVが標準治療である。しかし、その投与法は様々である。?本邦では5FU系経口剤が治療の中心であった。また、最近、5FU系経口剤により5FU/LVと同等の治療効果が得られることが3つのRCTで示された(Duillard ;J Clin Oncol 2001, Carmichael; J Clin Oncol 2001, Twelves; Eur J Cancer 2002.)。?新しい抗がん剤であるCPT-11、Oxaliplatinと5FU/LVの併用療法が5FU/LVよりも効果的であることがRCTで確認された(Zalts; New Engl J Med 2000, Duillard; Lancet 2000, de Gramont; J Clin Oncol 2000, Giacchetti; J Clin Oncol 2000)。我々は、治療効果を損なうことなく患者に受け入れられやすく、外来での治療可能な方法として、UFT+経口LV投与を試みた。UFT 400mg/m2と経口LV15mgを5日間連続服用2日間休薬、で繰り返した。前治療のない37症例が分析され、CR2例、PR10例で奏効率は32.4%であった。37例のうちCR例1例のみが生存中で、50%生存期間は14ヶ月であった(Ichikawa; Clin Cancer Res 2003)。この結果から、UFT/経口LV+CPT-11併用療法の第 I/?相臨床試験を試みた。UFT 400mg/m2と経口LV15mgを固定し(5日間連続投与、2日間休薬)、CPT-11は第1日目と第15日目に投与し、level 1 110mg/m2, level 2 120mg/m2, level 3 130mg/m2, level 4 140mg/m2としてphase Iを行った。MTDが140 mg/m2となったため、MDを130mg/m2として、phase ?を行った。現在19例が集積され、2例が第1クールを完遂できなかった。現時点で評価可能症例は16例で、CR1例、PR5例であり、奏効率は37.5%であった。半数は外来での治療が可能であった。
最近、経口LVとして保険認可が25mg錠となったため、新しく第I/?相臨床試験を開始した。レジメはUFT 300mg/m2と経口LV75mgを固定し(5日間連続投与、2日間休薬)、CPT-11は第1日目と第15日目に投与し、level 1 110mg/m2, level 2 130mg/m2, level 3 150mg/m2,として第1相試験を行うレジメを作成した。



乳癌領域における臨床試験の現状と展望

慶應義塾大学医学部 外科学教室
池田 正

現状
乳癌領域における臨床試験の歴史は古く、米国においてはNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (NSABP)が1958年よりprospective randomized trialを開始し、現在までにNSABP B-35までのプロトコールを行なっている。米国ではこの他、Southwest Oncology Group (SWOG), Eastern Clinical Oncology Group (ECOG)などが、欧州においてはEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC)が有名で、種々のトライアルを行なっている。わが国においては、1982年から行なわれたAdjuvant Chemo-endocrine Therapy for Breast Cancer (ACETBC)トライアルが大規模無作為化比較試験としては最初のものであろう。ACETBC1次トライアルは約6000例を集積し、その後も幾つかトライアルが行なわれ、1000例を超えるトライアルも7つ行なわれ、それらの結果が順次発表されている。
わが国における乳癌領域のトライアルの特徴と問題点
わが国における乳癌領域のトライアルは、経口抗癌剤を中心に行われてきた特徴がある。また、乳癌自体の特徴として比較的若年の女性に多く、ホルモン療法を含む種々の治療に対して反応し、予後は良いことが挙げられる。治験は進行・再発乳癌を対象にしたpIIの結果により承認されるが、臨床試験の場合には進行・再発乳癌は背景が種々で行ないにくいことが多い。それに対し、術後補助療法は背景因子が均質なことが多く、薬剤の効果を見やすい利点がある。しかし、乳癌のような予後の良い癌で治療効果を見るためには1000例以上の症例を必要とすることが多く、登録、データ管理などが容易でない。近年では、術前化学療法は、術後化学療法に比して予後は同等との結果が出ており、かつ奏効率で評価できるため時間がかからないなどの利点が多いことが認識されている。病理学的CRが予後のsarrogate end pointになることも認知されてきており、臨床試験の組み立てに大きく貢献している。現在の乳癌領域における臨床上の関心領域は、新薬の併用効果、predictive factor、dose dense chemotherapy、薬剤のcross-over effectなどである。
具体的な臨床試験の例示
以上のような問題点を検証するための臨床試験の例として、1)LH-RH agonist+AI vs LH-RH agonist+TAM、2)CAF*6→閉経前→LH-RH agonist+TAM vs TAM、3)高齢者に対するTAM vs TAM/UFT、4)NAT; CEF→TXT/Cape±Herceptin、5)TPによるカペシタビン投与などが考えられる。



胃癌に対する術前化学療法の第?相試験

名古屋大学医学部大学院 病態制御外科
小寺 泰弘

わが国における進行胃癌の外科治療は既に確立されており,拡大術式の延命効果は頭打ちである。この上治療成績の向上を図るためには集学的治療が必要である。術前化学療法は代表的な戦略のひとつであるが、その効果を証明するには、生存率を主たる,そして術後合併症率,治癒切除率等を副次的なendpointとする第?相試験が必要であるため、これを提案する。MAGIC trial (MRC)で既にECF療法による無再発生存期間の有意な延長が報告されているが、これは胃癌治療の根幹をなす外科治療の標準術式が異なる国での結果であるため,わが国での追試が必要である。術前化学療法の意義はlocal controlと遠隔転移再発の防止(すでに存在する微小転移の制御)にあるとされる。Local controlには放射線療法の併用が有用とされるが,わが国では外科的手技(リンパ節郭清)がlocal controlに寄与していると思われ,再発形式の中で局所再発の占める割合は思いのほか少ない。また、胃癌原発巣に照射を行なうことはわが国では一般的ではない。したがって、本試験では遠隔転移再発の防止に重きをおき、放射線療法の併用は避けることとした。対象症例は画像上リンパ節転移を有し(N1 ̄N3),遠隔転移を認めない(M0)進行胃癌(T2 ̄T4)とする。使用レジメンには、高い奏功率が要求されるが、JCOGの第?相試験(CDDP/S−1)殿重複を避けるために、OGSGで第I/?相試験が終了しているCPT-11/S-1 (CPT-11 80 mg/m2 days 1 and 15, S-1 80mg/m2 bid, days 1 ̄21, every 28 days)とする。CPT-11/S-1の奏功率は50%程度とCDDP/S-1に劣るが,外来治療が可能な点が利点であり、Pilot studyでpathological CRが出ている点,PD率が低い点も魅力である。MAGIC trialで明らかなように,術前化学療法と同一の治療を術後補助化学療法として行なう場合の認容性は低い。したがって、微小転移の根絶を徹底する目的で、奏功度がNC以上であることを前提に施行回数を4コース程度に増やすことを提案する。手術単独群との第?相試験に先駆けて,治療完遂率,治療関連死率(5%を上限とする)等をendpointとする第?相試験が必要である。



放射線増感剤PR350を用いた膵癌に対する術中放射線療法(Phase?Trial)

東北大学大学院 消化器外科 砂村 眞琴、松野 正紀、
PR-350臨床試験グループ

膵癌に対する術中放射線療法(IOR)では満足できる成績が得られていない。膵癌組織中に存在する放射線抵抗性の低酸素性細胞がその原因として考えられている。PR-350(Doranidazole)は低酸素性細胞の放射線感受性を高める目的で開発された薬剤である。局所進行膵癌に対しIORにPR-350を併用する多施設共同の二重盲検比較試験を施行した。1999年から2002年まで48例が登録されたが、肝転移を有した1例は除外した。IORは25Gyとし、PR-350群に対しては照射前にPR-350を投与した。PR-350群(22例)およびControl群(25例)いずれにおいても重篤な副作用は認められなかった。CTによる効果判定では、Control群の21.7%に治療効果が認められたのに対し、PR-350群では47.4%であった。生存期間中央値はControl群303日、PR-350群319日と両群間に有意差を認めなかったが、2年生存例はControl群の1例に対しPR-350群では4例認められている。
   
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